人間の証明~ジョー山中さん(歌手)~の逝去に思うこと [去りゆく人]
そんな中で、ロック歌手のジョー山中さんの逝去についても、ひっそりと東京新聞のお悔み欄に報じられていました。果たしてTVでは報じられたのでしょうか?私はジョー山中さんの逝去(享年64歳)の報を読み終えた後で、1977年上映の角川映画「人間の証明」を思い出しました。これは、森村誠一原作の推理小説「人間の証明」を映画化したものです。
私はこの映画で、二つのことが深く記憶に残っていました。さすがに森村誠一氏の推理小説を映画化しただけあって、ストーリーも素晴らしいものでしたが、特にジョー山中さんが歌っていた主題歌「人間の証明のテーマ」がとても好きでした。すべて英語の歌詞で、最初は海外の歌手が歌っているのかと思ったくらいでした。この歌はカナダのFM放送でも流れていたのを聴いた記憶があります。
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深く記憶に残ったことの二つ目は、映画の中で、事件の推理の鍵ともなった西條八十の詩「帽子」でした。この詩「帽子」を読むと、もうずいぶん昔の映画なのに、「エピソード記憶」の類なのでしょうか、映画のシーンが美しい景色と共にもの悲しく鮮明に思いだされます。
「帽子」詩・西條八十
母さん、僕のあの帽子、どうしたでしょうね?
ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
谿底へ落としたあの麦稈帽子ですよ。
*
母さん、あれは好きな帽子でしたよ、
僕はあの時、ずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
*
母さん、あのとき、向から若い薬売りが来ましたっけね。
紺の脚絆に手甲をした。
そして拾おうとして、ずいぶん骨折ってくれましたっけね。
けれど、とうとう駄目だった、
なにしろ深い谿で、それに草が
背たけぐらい伸びていたんですもの。
*
母さん、ほんとにあの帽子、どうなったでしょう?
あのとき傍に咲いていた、車百合の花は
もうとうに、枯れちゃったでしょうね。
そして 秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で、毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。
*
母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
あの谿間に、静かに雪がつもっているでしょう、
昔、つやつやひかった、あの以太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いた
Y・S という頭文字を
埋めるように、静かに、寂しく。
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